ヤクルト1000(シロタ株)の睡眠改善効果
ヤクルト1000は1本(100ml)に乳酸菌シロタ株(Lactobacillus casei YIT 9029)を100億個含む高菌数乳酸菌飲料で、機能性表示食品として「一時的な精神的ストレスを和らげ、睡眠の質(深さ、目覚めのすっきり感)を高める」機能が表示されています。
実際、徳島大学などの研究では、ストレスがかかる医学部生を対象にシロタ株入り飲料(100億個)を毎日11週間摂取させる二重盲検試験が行われました。
その結果、シロタ株群では深いノンレム睡眠(ステージ3)の保持やデルタ波パワーの増加が見られ、対照群で悪化した入眠潜時(寝つき)も抑制されました。
また主観的調査でも、シロタ株群は「目覚め時の眠気」が有意に改善し、すっきり目覚める人が増えたと報告されています。
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含有菌株・成分: 乳酸菌シロタ株(L. casei YIT 9029)100億個/本
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研究: 健常な大学生(医学生)を対象とした二重盲検RCT(シロタ群48名、プラセボ群46名)
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睡眠指標: EEG測定で深睡眠(N3)時間・デルタパワーの維持、入眠潜時の短縮。主観的にも「起床時眠気」「睡眠の長さ」が改善。
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摂取期間: 約11週間(試験は試験前8週~後3週)。効果は長期間の継続摂取で現れる傾向。
以上の結果から、乳酸菌シロタ株の継続摂取はストレス下における睡眠の質維持・向上に寄与する可能性が示されています。
ただし試験対象はストレス下の健康な若年層なので、一般成人や不眠症状のある人への効果は今後の検証課題です。
森永乳業「ラクトフェリンヨーグルト」と睡眠
森永乳業の「ラクトフェリンヨーグルト」は、牛乳由来の多機能タンパク質ラクトフェリンを1個あたり100mg配合した飲料タイプのヨーグルトです。
ラクトフェリン自体は乳酸菌ではなくミルク由来の成分ですが、睡眠改善効果の研究も注目されています。
特に、長野県の信州大学らが共同で行った試験では、1~2歳児(保育園児)109名を対象にラクトフェリン(48mg/日)含有食品を13週間摂取させ、睡眠アンケートで評価しました。
その結果、総合スコアはわずかな改善傾向を示し(対照:+0.5、ラクトフェリン:-1.9、p=0.074)、特に「朝の症状(目覚めの機嫌の悪さ、起床遅延など)」項目で有意改善が見られました。
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含有成分: ラクトフェリン 100mg/個(製品)
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研究: 幼児(1~2歳)対象の13週間二重盲検RCT。日中・就寝時刻や総睡眠時間には変化なし。
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睡眠指標: 保護者回答の「日本版幼児睡眠質問票」で評価。総合スコア改善に趨勢あり、特に「朝の目覚め」の改善が有意。夜間のむずむず脚症候群様症状(RLS)や寝不足傾向にも改善傾向。
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対象: 健常幼児。成人や高齢者の睡眠へのエビデンスは現状不足。
ラクトフェリンでは成人を対象とした公開済みの睡眠RCTは少ないものの、企業発表では会社員378名に270mg/日を4週間摂取させた結果、睡眠の質の有意改善と起床時の疲労感軽減が報告されています。
ただしこのデータは学会発表レベルのため、今後の査読付き研究で追認が望まれます。現時点では「子どもの朝のすっきり感改善」というエビデンスがあるにとどまり、大人の睡眠改善への効果はまだ限定的な知見です。
カルピス「届く強さの乳酸菌」(ガセリ菌CP2305)の睡眠改善効果
カルピス(アサヒ飲料)の「届ける強さの乳酸菌」に配合されるガセリ菌CP2305(Lactobacillus gasseri CP2305)も、近年「腸脳相関」研究で注目のパラプロバイオティクスです。
CP2305株は熱不活性化しても効果を示すとして研究され、複数の臨床試験で睡眠改善が報告されています。
例えば、2017年のJ. Appl. Microbiol.誌では、解剖学実習中の男女32名を5週間摂取試験した結果、CP2305群で睡眠の質(Pittsburgh PSQI)が有意改善し、特に男性で入眠潜時短縮・睡眠時間延長が確認されました。
さらに、2019年のNutrients誌RCTでは、医学部生60名を24週間追跡し、CP2305入りタブレットの服用群で不安・睡眠障害スコア(STAI・PSQI)の有意低下が見られました。EEG解析でも入眠潜時の短縮、睡眠後覚醒時間(WASO)の減少、デルタ波率の増加が確認され、プラセボ群に比べてより深い睡眠が維持されました。
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含有菌株・成分: ガセリ菌CP2305(L. gasseri CP2305、殺菌乳酸菌)
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研究: 健常若年成人(医学生)対象の複数RCT、および2023年のメタ解析。試験期間は5週間~24週間。
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睡眠指標: PSQI(睡眠満足度)、STAI(不安)、単チャネル睡眠EEGなど。CP2305群でPSQIグローバルスコアがプラセボに比べ有意改善(メタ解析で平均差-0.77、p=0.01)。EEGでは入眠潜時短縮、睡眠維持率(WASO減少)、初回睡眠サイクルのデルタパワー増加が報告されました。
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対象: 健常成人(ストレス環境下の学生・社会人など)。
以上のように、CP2305は複数試験で睡眠の質向上が再現されており、最新のメタ解析でも「ストレス下の成人で睡眠満足度が有意に向上する」と結論付けられています。睡眠メカニズムには腸内環境の安定化やGABA産生増加などが関与する可能性が示唆されていますが、個別差や性差(男性への効果が強いとの報告)も報告されています。
各製品の比較まとめ
以上をまとめると、睡眠改善をうたう機能性飲料には含有菌株や成分、エビデンスの量・質に大きな差があります。主な比較点を以下に示します。
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含有成分:
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ヤクルト1000…乳酸菌シロタ株(L. casei YIT9029)100億個/本。
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ラクトフェリンヨーグルト…乳牛・母乳由来タンパク質「ラクトフェリン」100mg/本。
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届く強さ乳酸菌…殺菌ガセリ菌CP2305(L. gasseri)配合。
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研究の量・質:
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シロタ株はYakult中央研・大学との共同で複数の二重盲検RCTが発表されており、睡眠・ストレスの両面で精力的に検証されている。
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CP2305も高品質なRCT(学会誌掲載)や大規模試験、最新のメタ解析があり、エビデンスが豊富で質も高い。
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ラクトフェリンは幼児対象の国内RCT(2020年Nat Sci Sleep誌)など限られた研究のみで、成人への試験は学会発表レベルにとどまる。
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睡眠指標:
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シロタ株とCP2305はいずれも客観的EEGデータ(入眠潜時、デルタ波、覚醒時間など)と主観的調査(PSQIや睡眠アンケート)で改善効果が確認されている。
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ラクトフェリンの場合、上記の試験では睡眠開始/終了時刻に変化はなく、アンケート上の「朝の目覚め」項目などで改善が認められた。客観的な脳波解析データはまだありません。
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効果の持続・摂取期間:
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シロタ株は継続摂取(約2〜3か月)で効果が示され、短期間の服用では検証されていません。CP2305も最長24週間の継続で効果を確認しており、一般に毎日の継続摂取が推奨されます。
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ラクトフェリンは試験期間13週間で効果が出ており、効果発現の目安は同程度と思われますが、長期継続の安全性や持続効果は未検証です。
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対象者:
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いずれの製品も主な試験対象は健康な成人(学生・社会人)のストレス環境下ですが、ラクトフェリンは幼児を対象とした報告しかありません。ヤクルト・カルピスはストレス下の成人での効果報告が中心で、睡眠障害を専門とする患者層への有効性はまだ不明瞭です。
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【要点】ヤクルト1000(シロタ株)もカルピスCP2305も、医学的研究で睡眠の深さや目覚めの改善が示されており、科学的根拠は比較的充実しています。
一方、森永のラクトフェリンは現時点でエビデンスが少なめで、「睡眠の質向上」と言うには追加研究が望まれます。
どの製品も毎日の継続摂取が前提となっており、効果は摂取中に観察される傾向です。総じて、製品選びの際は「含まれる菌株/成分」「対象者や用途(ストレス性か幼児か)」「研究の信頼性」を確認し、過度な期待を避けつつ活用するのがよいでしょう。
参考資料: ヤクルト中央研究所・大学の臨床試験結果、Morinagaらの児童対象RCT、カルピス(アサヒ)関連研究など。各記事中の数値・p値は原文参照。






